2014.04.29 [JDMC] 日本の電子政府の歩みと課題
海外先進事例に学ぶ行政データマネジメント研究会
一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)の有志で立ち上げた「海外先進事例に学ぶ行政データマネジメント研究会」(行政データマネジメント研究会)。
研究活動の一環として、2013年10月8日、政府/法務省CIO補佐官の森田勝弘氏をお招きして、日本政府の情報化や電子政府の取り組みの状況と課題、職員や利用者の視点でサービス品質を高めるポイントや見解をを伺いました。
森田氏の指摘は、どれもごく当たり前の事柄でした。
「不動産の所有権移転等の登記手続きについては、法務局では、住民票を必要とする部分については、住民基本(住基)台帳コードを書き込むだけでよく、(住民票の)提出は不要となっている。法務局の職員がそのコードを手掛かりに住基ネットを使って確認しているからだ。現状では、職員が手作業でやっていて、データ連携による自動化の仕組みまではできていないが、国民を紙文書の「運び屋」にさせないことは、やればできる、ということだ」
「この電子政府化の時代に至っては、法律規則には概念モデルを添付すべきだ。そうすることにより、情報モデルはこうなる、業務プロセスはこうする、という「見える化」ができるようになる。技術者にも正確に内容が理解できる」
「私が提言したいのは、最適化指針におけるEAについては、もう一層「JA」すなわち法制度体系(Jurisdiction Architecture)を加える必要がある点である。 JAは、議会を中心に政治主導で行うべきものだ。まずは、政治主導で法制度体系が形作られ、それを概念モデルとして、業務体系への展開からシステムの実装へと落とし込んでいく。具体的なBAができればデータ体系(DA)も自ずと決まる。下の4層は行政主導で進めるとよいだろう」
研究会を通じて、多くの組織が関わる業務改革においてこのようなアーキテクトの視点が欠けていることを、異口同音に聞きました。一人ひとりが社会の担い手として主体的に考え行動しつつ、異なる立場を互いが尊重し、その中で合意形成を図る、という経験が乏しいことがどうも本質的な課題の一つにあるようです。
「行政の用語についてもしかりである。「申請」と「請求」、「発行」と「交付」、意味的に同じであれば、統一すべきだ」
用語のばらつきについては、用語を抽象化した概念を構造的に定義する 共通語彙基盤のリファレンスモデル を介することで、それぞれの用語を生かしたまま、コンピューター上でサービスや機能に必要なデータをやりとりすることが可能です。必ずしもどちらかに統一(肩寄せ)しなくても良いでしょう。
ただ、どのようなリファレンスモデルを作るか、この合意形成において各省庁、自治体の関係者が我田引水を主張すれば前に進みません。大局的、長期的な視点から社会的な損失を抑える、リソースをより優先度の高い課題解決に取り組む、教育や研究に投資する。肩書きや面子を優先するとどれも行き詰まりそうです。
大げさなことを叫ばずとも、起きていないことをあれこれ案ずるよりも、すでに起きてしまったことを悔いるよりも、まずは下手でも良いので一人ひとりが省庁の業務のモデルやプロセスを描いたり、データやファイルを操作してみたり、コツコツ手を動かすと何か違う風景が見えてくるものなのかもしれません。
- 「日本の電子政府の歩みと課題」
https://https://japan-dmc.org/?p=3252
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